裁判で建築確認が取り消された

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さて今回は、建築確認が裁判で取り消され、建築中だったマンションの工事がストップしてしまった事例をご紹介します。

建築主は、東京都新宿区で建築確認を下ろしてマンションを建築していた。

しかし、近隣住民の訴えにより建築確認が取り消され、計画が宙に浮いてしまったのだ。

マンションの建築主である新日本建設(千葉市)は、建築確認を下ろした新宿区などを相手取り、損害賠償を求める訴訟を提起したが、東京地方裁判所は2014年2月、原告の請求を棄却した。

このマンションは鉄筋コンクリート造、地下1階、地上3階建て、30戸の計画だった。

敷地は有効幅員4m、長さ34mの道路状空地のみで接道する通称旗ざお敷地です。

マンションの延べ面積は約2820平米で、東京都建築安全条例では、延べ面積2000平米を超え3000平米以下の建築物の敷地については、8m以上の道路に接するように規定されている。

但し、建築物周囲の空地の状況などにより必要と認められる場合、この規制の適用を除外する特例(安全認定)がある。

建築主はこの安全認定が得られたことを確認して、前所有者から2004年に計画地を購入し、建築確認を取得して着工している。

そこに計画地の近隣住民らが、安全認定が違法であるとして建築確認の取り消しを求める行政訴訟を起こした。その結果、なんと2009年に建築確認が取り消されてしまったのだ。

これを受けて建築主は、新宿区の判断(安全認定)に過失があったとして損害賠償を求めたが、東京地裁はその訴えを退けた。

つまり建築主が事前に当該敷地において新宿区に「安全認定」が得られることを確認してから土地を購入したが、建築確認を経て建築していたところ、近隣住民からその安全認定は違法だと訴えられ、建築確認が取り下げられてしまい、建築が継続できなくなってしまったという事例です。

普通に考えると、本件の建築主の手順はごく自然の流れで、事前確認をして適切な手順を踏んでから工事着工しているから何の問題もないように思いますよね?

しかし、近年ではこのように行政の判断と司法の判断が分かれてしまい、設計者や施工者、そして建築主にその火の粉が降りかかるケースが増えているのです。

本件のケースでは、「安全認定」を適用して建築確認を下ろした新宿区の建築主事の過失が、国家賠償請求訴訟においては認められなかったという事例だ。

裁判の但し書きでは、建築主の責任や建築主事の過失の程度によっては、国家賠償請求は否定される場合がある。建築主にある程度の責任があり、かつ建築主事に大きな落ち度がない場合は、国家賠償請求が認められない可能性がある、としている。

最高裁判決は、建築物の安全性は「建築士の業務の遂行によって確保されるべき」と指摘している。従って最高裁は、建築物の建築基準法関係規定への適合性について、第一に責任を負うのは建築主から委託を受けた建築士であるとの認識を示している。

つまりこのケースでは、4mの旗ざお敷地では、仮に新宿区の建築主事が東京都建築安全条例の但し書き(安全認定)を適用してもよいと判断したとしても、建築士はその判断を疑い、当該道路状況下においては8m以上の道路に接すると同等の空地の状況には当てはまらないと解釈し、建築しない、或いは計画をより小規模に変更して提案するなどの配慮が求められるということ。

これは極めて難しい判断であり、通常我々設計者が設計の依頼を受けた際に、やはりまずは行政に事前相談を行い、その内容をもとに行政の指示に従って設計を進めるのが本来の流れであったが、近年では行政の判断と指導によって設計を行っても、司法の場でそれが覆されるケースがある。

設計者は、特殊な案件においては、行政の判断を鵜呑みにするのではなく、設計者自信の判断で法律や条例を解釈して設計をする必要がある。ある種、建築士は建築の法律や条例が曖昧な部分において、建築主のプラスになるような考えはせず、平等と公正な立場により、独自に専門性を発揮してそれらを判定しなければならないという厳しい立場であることを認識する必要がある。

まとめ
■判決の争点
(1)区の安全認定について過失が認められるか。
(2)安全認定や建築確認、消防同意について、原告との関係において国家賠償法上の違法と評価され得るか。
(3)区の建築確認、都の消防同意に過失が認められるか。
(4)区や都に過失がない場合、原告の損失補償請求が認められるか。

■条件付で国家賠償対象に
建築確認行為は建築主との関係でも、国家賠償法上の違法に該当し得る。但し、
(1)建築主が建築確認への不適合がある程度認識していたなど、責任が認められる。
(2)建築主事に大きな過失が認められない。
これらの場合に、総合的に考慮したうえで信義則に反すると判断されれば、国家賠償請求は否定される。