外断熱工法 その①(ガイド編)

さて今回は、「外断熱工法」(はじめに編)についてご紹介したいと思います。
ここでは、まだ外断熱について何も知らない方から、既に検討して頂いている方までご覧いただける、「外断熱工法」における実績や特徴、そしてメリットやデメリットなどを書かせていただきます。

それでははじめに、外断熱の日本での普及についてお話し致します。
現在は比較的大規模な工事においても採用されている「外断熱工法」ですが、私が初めて外断熱を採用した20年ほど前は実はほとんどゼロに等しい状況でした。
外断熱・・・何それ?
そんな工務店も多々ございました。
それが少しずつ普及しはじめ、自然災害などにより省エネが注目され、高気密高断熱住宅の普及により外断熱工法も増え続けているという現状までの流れになっております。

そして私が本格的に外断熱住宅を軸にしたのが今から15年以上前の話になります。
それ以来、外断熱工法を研究し、それぞれの建設現場ごとにいろいろな問題点にも直面しました。

外断熱工法はきちんとした技術と実績ないと的確な施工が難しいのも事実です。
その証拠に、「外断熱のデメリット」などで検索して出てくる問題点というのはほぼ施工実績や知識がない工務店の工事によるものが大半を占めています。

しかし、きちんとした建築技術とマニュアルを習得して施工すれば「内断熱」よりもはるかに工務がしやすく、工事の納まりが良いというのも事実です。

ここで「納まり」(おさまり)というのは、我々技術者がよく建設現場で複雑な工事の打ち合わせの際に使用する用語なのですが、簡単に言えば「雨漏りしないための詳細な施工マニュアル」(実際は雨漏りだけではありません)のようなもので、人間で例えると、サラリーマンの方なら肌着の上にワイシャツを着て、ワイシャツにネクタイをしめてスーツを着ます。お子さんなら夏は男の子ならTシャツに半ズボンにサンダルとかでしょうか?
そして建設現場の作業員なら作業服を着てヘルメット、重量物を扱う場合は安全靴を履いてという具合でそれぞれの職業や人によって着るものが変化するように、建築物もその種類や工法によって施工(工事)の方法が異なってきます。

もっとわかりやすく言うと昔、松下幸之助の「雨が降れば傘を差す」という有名な言葉があるように、人として当たり前の行動を当たり前のように行っていればまず道を踏み外すことはないと私はこの言葉の意味を理解しています。つまり技術者として外断熱工法を採用したケースの「屋根の施工方法」「壁の施工方法」「床・基礎の施工方法」というものを、しっかりと「施工説明書」をマニュアル化して、それを職人が適切に施工すればなんら問題ないということです。

問題なのはこの施工方法(納まりやマニュアル)が会社によって異なるケースがあるということです。具体的には知識のない技術者が間違った施工方法(マニュアル)を職人に指示してしまっているというところがひとつ問題なのと、それを施工する技術者(職人)が間違ったマニュアルに気付かずに、若しくは知っていてもそのまま会社のマニュアルだからといって施工してしまっているのが問題なのです。

建築工事において一番大切なのは、「気遣い」です。
気遣いを持って施工すれば自然とマニュアルの確認も行いますし、何より工事現場においての施工を自分たちでも考えながら丁寧に行うことになりますから、仮にマニュアルに問題があってもそれに気づいて対策を講じてマニュアルを更新することができます。

以上から、外断熱工法は確かな経験や施工実績、そして技術指導力を持った管理者の下で施工することが必要不可欠なのです。
適切な指導者の下で施工された外断熱工法は、内断熱工法よりも施工性が高く、壁体からの熱損失が低くなるのは間違いのない事実です。

ではデメリットが全くないのかといえばそうではありません。

まず一番のデメリットは断熱素材の価格が高いことでしょう。外断熱は読んで字のごとく、壁の外側に断熱材ですっぽりと覆ってしまうため、外壁材との間に柔らかい断熱材がはさまれることになります。そのため、壁の断熱材にはある程度外壁の荷重を受け流すための工夫が必要になりますが、その最大のポイントが高性能な断熱材を採用して断熱材の厚さを限りなく薄くするということです。そうすることで、壁断熱材への負荷が減り、外壁の下地素材として安心して採用できるのです。

当然ですが、高性能な断熱材はとても良質な素材ですが、その分、価格も高額になります。
どのくらい違うかというのは、比較する断熱素材によって異なりますが、数倍から十数倍となるケースもございます。

ちなみに現在私が推奨している断熱材は日本で1位と2位を競い合うメーカーの商品です。優れた断熱性能を持ち、外断熱工法として「準防火地域でも採用可能」です。埼玉県川口市においては、壁面の断熱材の厚さは35ミリで「次世代省エネルギー基準」(11年基準)をクリアできるため、安心して外断熱住宅に採用していただけます。

そのほかにもポイントはいくつかございますが、長年「外断熱工法」に携わってきた私が思うのは、「外断熱住宅のデメリット」は「素材の価格が高い」こと「納まりの熟知が必要」、そして「高い施工精度」くらいしか思いつきません。要するに予算と専門の高い知識と高い技術力が必要だというただそれだけです。

逆にメリットは大きなものとなります。

①外断熱工法を採用することにより、内部の配管やコンセント廻りの工務はとても施工性が高まります。内断熱工法のように断熱材の欠損もありませんし、その気密テープ処理も不要ですので作業効率が高まります。
外断熱 断面 イメージ
↑このように壁の中には断熱材が入らないので、その空間を自由に電気配線や設備配管を施工することができ、作業性が極めて良好です。

②壁の中に断熱材がないので壁の空間を利用した設備工事がスムーズに行えるとともに、配線の自由度も高くなり、材料の無駄がなくなるためエコにも優れる家造りができます。

③構造用金物との干渉もなく、部分的な断熱材の押し潰しによる断熱性能の低下も生じません。そのため、断熱素材の性能を十分に発揮できます。

④建築物を外側からすっぽりと覆ってしまうため、構造体や構造金物などによる熱橋の影響を受けにくいので高断熱な家造りが可能です。また、内断熱のように壁体内での結露の不安もなくなるため、カビやダニによる健康被害もありません

⑤必要に応じて内断熱工法を併用することでさらに快適な家造りができ、ゼロエネルギーハウスも屋根のソーラーパネルを併用すればラクラク実現できます。

⑥高気密高断熱住宅の施工が容易にできるため、環境にも優しい省エネルギー住宅となり、無垢材など自然素材を採用することで、心地よい空間が実現できます。

・・・と、軽くピックアップしただけでもスグにこの程度のことが浮かんできます。

最後に、この記事は断熱メーカーや単なるライターが書いたものとは違い、実際に20年以上「外断熱工法」と向き合ってきた「設計と施工」のプロが直接書いたものなので、現場の生の声だと思って参考にしていただけたら嬉しいです。誤字脱字、文書力の低さなどはご勘弁下さい。

それでは次回は実際の「外断熱工法」について、その施工例をご紹介していきたいと思います。

外断熱の家

外断熱工法 その②(基礎断熱編)